「だから教えてよ、その方法をさ?」
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自我ってモノが埋め込まれた瞬間に、脳味噌が滅茶苦茶な情報を異常な速度で受信しちゃって、
頭の中がキャパオーバーしたんだよ。
気狂いとか、精神疾患だとか言われたら否定する要素は無いんだ。
妄想と現実の境目が解んないんだよね。
記録違いなのか真実なのかも知りようが無いし……
誰かの物語を画面越しに傍観してるみたいで、
気が付けば物語の主人公と同じ様に真っ赤な血で両手が染まってたり。
誰も知らないし共感も共有もしない記憶なんて、デタラメな嘘や夢でしか無いと割り切ってみてもやっぱり現実と映像がリンクする。
目を開ければ彼が居て、彼女を愛してて、君を見つけ出そうとしてるんだ。
輪廻転生?デジャヴ?
とにかく常識外れな日常を、だらだらやり過ごしてみるんだよ。
行き着く先は変わらなくて、やっぱり『その日』は始まって
俺はまた手を真っ赤に染めている。
うんざりして目を閉じると薄明かりと水音の中、
呟いた名前と否定をエンドレスリピート。
いい加減にしてよ神様。
良い加減に赦してよ、糾弾する影に言っても意味無い話。
神様の思惑通りに罪を犯したソイツの罰を何で俺が償わなくちゃなんないの?
理不尽を違和感を主張したらいけないの?
神様、俺の罪は後何回の懲罰の上で赦されますか?
繰り返し貯まる映像を、後何回見続けたら上映会は終わるの?
「それは、貴方が役者に選ばれたからですよ」
あっけらかんと応えたそれは、絶望的な程の笑顔で俺を見る。
誰も知らない筈の記憶を、それは知ってた。
知った上で演じろ、と言った。
「僕が君になる筈で、君が僕になったかも知れないからです」
そう成らなくて良かったね、なんて……
苛立ちと嫌悪感をご丁寧に添えてくれちゃって。
「じゃあ、どうしろって言うんだよ!?」
感情に任せて手を叩き付けた強化硝子越しに、不思議そうにそれは首を傾げて、笑う。
「そんな事、貴方はもう解っているのに聴くんですか?」
漠然と、俺は知った。
いや、本当は知ってたのかも知れない。
今度こそ全部護ると、
今度こそこのふざけた舞台の幕を引き摺り下ろしてやる、と……
見飽きた映像を真似ながら、俺は従順に演じる。
また来る『その日』に向けて爪を研ぐ。
嗚呼、神様、罪人の償いを照覧あれ。
手にした獲物を握り直し、俺は待つ。
知らない罰を受け入れよう。
神の舞台を壊す為に……