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明日、世界が滅ぶとしても


人間なんて、いつかは死ぬ。
当たり前の真実で、確約された現実。


白黒付けたがる俺達は、考えて工夫して進化してきた存在だ。


唯一無二の高い知能を持つ、余りにも矮小な生き物。
つまり、人間。


目が醒めて、窓から覗く天候は晴れ。
変わらない1日の幕開けでしかない。


制服を取り出して着替える。
皺の無いズボンと白いシャツ。


この区画は平穏で、欠伸が出そうな座学も、怒号飛び交う訓練も、当たり前の日常だ。


そんな当たり前の筈だった今日も、
俺の両脇に居た人影は無い。




青空の先に視線を向ける。
此処では無い区画には、廃墟と呼ばれる危険地帯が有る。

そこに入るには特別な許可か、法規を犯して立ち入るしかない。


もしくは、








もしくは、人間では無い存在になるしかない。












かつて、俺には友人が居た。

3人で、この国と人類の為に尽力を尽くそうと夢見ていた。




そう、所詮夢は夢。
現実では無い戯れ言。


2人の友人達は、任務で廃墟へ赴いた。
俺は学校で、退屈な座学を受けていた。


その日は、晴れだった。




やがて廃墟が原因不明の崩落を起こしたしたと学校に連絡が入った。


中には数名の特殊部隊候補生が閉じ込められたらしく、救助部隊が慌ただしく出立していく様子を、ただ眺める。



あの2人なら、絶対に大丈夫。
だから心配はしていなかった。


1人は馬鹿だが、動きが格別に良い。
感情的になる欠点を押さえればかなり優秀な戦力になる。

もう1人は臆病だが、慎重に考える。
些か自信が無い様子でも全体を見て判断する力が有る。





世の中に絶対なんてモノは数える程度しか無かったのに。






雲一つ無い快晴。
たった1人の生存者は、全身に包帯を巻かれた姿で隔離病棟に容れられた。



発狂した友は、化け物の存在を喚きながら掴みかかる。
床に引き倒された俺に向けられた制御の無い殺意。

取り押さえられて鎮静剤を射たれたそいつは、視点の合わない目を見開いて崩れた。








「なぁ、死ぬなよ?」



包帯を解かれたそいつは、耳を塞いだ。



新年度。似合わない制服を着たそいつは、一発の銃弾を轟かせて退学処分になった。



擦れ違う廊下の一瞬。
上着を脱いだそいつは、笑った。



「気を付けろよ……」





するり、解いたソレを押し付ける。




「……想像以上に、腐ってやがる」



囁きに振り返っても、片手を振るそいつはそのまま姿を消してしまった。









人間は、明確な理由付けが必要な弱い存在だ。


そいつは人間を辞めた。
最初から人間では無かったのだ。



そいつは、そういった奴等は知覚者と呼ばれる。
人間にとって危険因子、制圧しなければならない存在。



人間では、解らないんだ。
そんな事、当たり前だろう?


取り出したネクタイを絞めて、鏡を一瞥する。










譲れないんだよ、俺も。
人間として繋いできた存在を、価値を、奪われた歴史を、全てを。



机の上のケースを掴みとった。
中身は疑似進化薬、副作用は未知数。



戦わなくては未来が無い。
選ばなければ意味が無い。



人間は諦めない。
戦いを諦めない。必ず、次を紡いでみせる。




例え、明日世界が滅ぶとしても……

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