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留どなく流れる閑話

「いやぁ、参ったね!スキンシップが過激なのも困りモノだわ」


あっはっは、と擬音が付きそうな程に明朗な笑い声の主はその様子とは裏腹にかなりボロボロな状態で椅子に座っている。


「いやそれ、そんな優しいモノじゃ無いよね?
って言うか、本人にそういうの見せるから酷い目に遭うんだよ」

「あ、そお?何て言うのかね、欲求不満を解消してあげようかなって言うお兄ちゃんの優しさだったんだけどなぁ〜?」


この男はかなり不謹慎ながら自作の規制同人誌をネタにした本人に見せる暴挙をして、ボロ雑巾みたいな姿に粛正された訳で。

「自業自得だよ。
って言うかそれ不識、君の欲求解消でしか無いと思うけど?」

「そうかな〜?姫菜だって望み薄な思慕な訳だし〜、所長も若い娘となら嬉しいんじゃない?」

「…その辺僕に聞かれても解らないよ」

やれやれと溜息を吐いて見せても、不識には反省の色は無い。


「すいません、遅くなりました!!」


パタパタと小走りな足音が聞こえたかと思えば、申し訳なさそうに憂がペコリと頭を下げた。

「毎度悪いね〜、憂にゃん!」

「悪いと思うなら反省しろよ」
全く悪びれずへらへら笑うので、半眼で釘を刺す。


「大丈夫ですよ〜不識さん!
今日も凄い怪我ですねぇ?」


憂はにこにこと笑いながら不識の調子に応えている、下らない理由の怪我で通われているのだから怒っても罰は当たらないと思うくらいなのだが…


「で、何でエゼルは此処に居んの?」

「今更過ぎるだろっ!?
君達がドタバタ騒ぎを起こすから、僕が様子を見に来る羽目になったんじゃ無いか」

余りに自然と問われた事に軽く怒りすら感じたが…


「エゼルさん、学生生活と仕事も有るのに、大変ですねぇ?
もし、体調不良や疲労感が有ったら遠慮無く言って下さいよ?」

「Thank you.でも今の所は不具合は無いよ、大丈夫さ」

「そうですか?良かったぁ〜」


割と真面目に心配したり、安堵して笑う憂を見ると些細な怒りは緩和されてしまう様に思えて来る。


「ん〜…こりゃあもう一本行けるか?」


まじまじと見ていた不識がとても不適な笑みを浮かべて呟いた。


「…?…何処か行くんですか?不識さん」

「いやいや、寧ろイくのは俺じゃなくて憂にゃんのほ…」


ドスッ!!と鈍い音を立てて、僕の手刀が不識の脳天に落ちる。

痛いだ何だと抗議を受けるが無視だ、無視。


「あ、あの、エゼルさん…今の痛いんじゃ…?」

「あぁ、憂。不識の事は一切気にしなくて良いよ」

「え、でも…」

「No problemさ」

「いや、痛いし。問題有るし…何なのよ?」


頭を摩りながらブーブー文句を言われる。

軽く鬱陶しいから、簡素に理由を述べてやる事にした。


「絶対に良からぬ事を考えてそうだったからね」

「いや、そんな事は無いよ〜?
そりゃ需要は無さそうだけど…」


ひょい、と不識が立ち上がり僕の肩に腕を回して耳打ちをする。

「…エゼルも健全なんだし、此処は俺が一肌脱いで憂にゃんとにゃんにゃんするネタをだねぇ?」

「お前、馬鹿だろ!?」


ニヤニヤと笑う不識を引き剥がし、そのままローキックを叩きこんでやった。


「オウフ!!?」

「…君に反省が無い事は良ぉぉく判ったよ…」

「わ、わ、チョット待って待って!エゼルも何でそう皆短気な訳よ!?」

「短気じゃ無くて呆れてるんだよ、とにかく不識は反省部屋行き、決定」

「理不尽〜!!!」


ぎゃあぎゃあ喚く不識をサクッと手帳の中に引き擦り混むと、治癒室に程良い静寂が戻って来た。

「まだ治療、終わって無かったんですけど…」

「後は僕が引き継いでおくよ、最悪漬け込めば治るしね」


おずおずと話し掛ける憂に、極力優しく笑顔で対応を返す。


「憂は別な仕事に向かって良いよ、僕もやる事が出来たし」

「はい、じゃあ、あの…宜しくお願いしますね?」


軽く苦笑と一礼をしてから再びパタパタと駆け足で去る憂を見届けた後、溜息が口から零れる。


「…さて、どうしてくれようか?」


黒表紙の手帳を半眼で睨み付けながら、僕も廊下に足を踏み出す。

今日もまた平穏で平凡で、チョットだけ擦れた時間が流れて行くのを感じながら…
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