「さよなら」を、
後何回言えば、
巡り逢えるのだろう…ー?
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夕暮れの町で、出逢った。
夏も、秋も越えて…
ずっと一緒なら、良かったのに…。
「…え…?」
帰るのだと言われた。
冬に、
悲しそうに見える顔は、君が生きているからだろう。
物では無く、モノなのだ。
魂が宿り、呪を持つ存在だから。
[帰る]のだ、未来に…。
元々、感情等を学びに来たのだ。
大切な記憶、記録、想いを沢山持ち帰る為に…。
それはデータになって、未来をほんの少し変えるのかも知れない。
偶然ではなく、必然で出逢った。
悲しそうに俯くこの子の頭をそっと撫でる。
丸くて、愛らしさがある作りだ…。
「夕陽の事、忘れちゃう?」
機械は、簡単に記録を消せる。
復元する事も可能だろうが…。
つぶらな瞳が、濡れている。
「忘れないよ」
忘れない、絶対。
例え心が忘れても、躯に刻み込む。
例え躯が忘れても、心に刻み込む。魂の記憶は、忘れない。
「だって、夕陽は俺の家族だろ?」
笑ってやれば、小さな体が抱き着いてきた。
ヒラリ、とマフラーが靡く。
夕陽がせがんで、俺が与えた家族の証。
大好きな麦藁帽子、ウサミミ頭巾、おばあちゃんから貰った洋服…、
大切な沢山の宝物達…。
帰ったら綺麗に纏めてあげよう。
その日に忘れない様に…。
好物の駄菓子も、薄荷糖も持たせてあげよう。
あんまりお金は無いから、少しずつだろうけども…。
寂しくない様に。
「冬まで、まだ時間が有るんだ、悲しくないだろ?」
手を握る。
「帰ろう?」
帰ろう…。
今はまだ、あの家に…。
ゆっくり歩く道。
忙しくて構えなかった時間が、堪らなく悔しい。
でも、まだ時間は有る。
遅くないなら、
それでも良いなら…、
「一緒に居よう」
誰かと長くは居られない。
俺は流転、留まれぬ流れ。
人より多く出逢い、
人より多く離別する。
でも、紋様たる絆は消えないなら…、
寂しくない。
また逢える…。
そっと触れる柄に、故郷の感覚を呼び起こす。
沢山の人を泣かせてしまった。
大切な人も、見ず知らずの人も…。
それでもまた出逢う。
なら、何時の日か…、
また重なる日を信じよう…。