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空色崩曲

空の色 遠い色

辺り一面染め上げるー…


何という事でも無い

寝そべり見上げる空は偶に落ちてしまいそうな気にさせるだけ

それだけ

白いヘッドフォンは相変わらず若干の音を漏らす

性能のせいじゃない、音量を上げているせいだ

授業をサボるのは昔からの日課

誰もいない屋上は晴れの癖に風通しが良く、日陰を選んで横になっている

見上げているのか、
見下ろしているのか…

解らなくなりそうな青だ

耳元に聴くお気に入りの曲

片手で取り出した携帯を開く

何食わぬ調子で操作

…数秒後の返答…

『新着メールはありません』

解りきっている癖に半眼になっている自分

「…アホか…」

誰に言う訳で無い呟きのつもりだった

再び携帯を弄ぶ

慣れた調子で作曲プログラムを起動させた

昔から使ってるコレは勝手が良く気に入っている

唯一無二のプログラムだ

適当に旋律を組み合わせる

あぁ、抜ける様な空なんか、曇ってしまえば良いのに…

ーーーーーーーーーーーーーー

何故、ソレを持ち歩くのか?

そんな事俺自身解って無い事だ

フラフラと放課後の廊下を歩く

教室に近付いた時だった

見慣れた青が見えた気がした…

少しだけ、歩みを速めてみた

ドアに手を掛けるー…

「…うぉっ!?」

「………………」

不意に開いたドアの向こうに若干驚いた様子の奴が居た

「…んだよ、脅かすなっつ〜の」

半眼になり睨んでやった

「…済まない…」

予想通りの反応

相変わらずの鉄面皮は涼しいままだ

「………………」

「………………」

沈黙

睨む俺に無表情気味な奴

教室に誰か居たら迷惑極まり無いポジションで動かない2人

まぁ、居ないから気にしねぇが…

「ってか、何で居んの?」

『学生だから』とか言われたら元も子も無い質問である

…そう切り替えしたら蹴り入れてやろう…

「仕事の合間だ」

チッ、蹴り入れ損ねた

って言うか普通仕事が先じゃないだろ?

勉強があって合間に仕事だろ…多分…

「ふぅん?」

何だか気に喰わないから思いっきり流してやった

「…元気そうだな…」

……何故…笑うし…?

いや、他の奴から見たら全然笑って無い様に見えるだろう

だが、俺には解る

「…笑うな…」

微妙な変化だが、今、コイツは笑った

「…………」

気に入らない

ますます不機嫌化してそうな俺を余所に何でコイツはこんなにも普通なんだよ?

不機嫌も極まれば呆れる、と言う事を俺はコイツ等から学んだ

まぁ、ドチビが居ないだけ良い方な気もするしな…

ふと、肩に掛けている荷物に気付く

恐らく、必要な資材等だろうか…?

「…まだ…かかるのか?」

荷物を見たまま呟く俺に奴が答える

「…あぁ…もう少し…長引く」

どこぞの戦闘に駆り出されている為コイツは今は授業免除の身だ

何だか、もやっとした

唐突にポケットからCDを突き出す

レンズ越しの瞳が不思議そうに見ている

「やる」

「…コレを…か?」

「当たり前だろ」

「…何のCDなんだ…?」

依然不思議そうな奴の胸にCDを押し付け渡し、教室の中に押し入る

視線が背中に刺さる

「…漣…」

「何でも無ぇよ」

ひょい、と自分の鞄を肩に掛け、踵を返す

CDを持つ奴が通路に立っている

空いている肩で押し退け、廊下に出る

「…れ…」

「只の、失敗作だ!」

奴が声を終えるより早く簡素に中身を伝える

「…失敗…?」

「気に入らなかっただけだ、嫌なら割って捨てろ」

そのまま俺は振り返る事無く寮へ向かった

夕日に染まる空遠くはまだ青のままだ…

ーーーーーーーーーーーーーー

〜♪〜♪〜♪♪…♪…

簡素な天井を眺めながら俺はまた横になっている

白いヘッドフォンからは漏れる音は無い

…気に入らない曲…

目を閉じると黒の向こうに空色が見える

浮いているのか?
沈んでいるのか?

そんな事も解らない

ただ、自分がそこに溶けてしまいそうな錯覚に陥るだけで…

着信の音に意識が戻る

開いた箱に表記が1つ

『新着メール1件』

空色の空間に何故か立つ姿

封を開ければ普段通りの簡素な文の末端

『俺は好きだ』

「…バッカじゃね〜の…?」

呟いた声は空に消える

夏の余韻は熱いままだ

放った携帯をそのままに、俺はまた視界を閉じたー…
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