紫月さん、負けず嫌いだなぁ(確認)
勝ち目の乏しいゲームに挑む
別にギャンブラーじゃないのにね
コンテニュー代償は彼の構成数値
一つ欠け、一つ失い……徐々に彼では無くなるゲーム
ま、対戦相手は取られたモノを取り返してるだけかも知れないけど
仲間を犠牲に、自分を代償に
積み重ねたリテイクの果ては理想的希望
『主人公』は血塗れた制御棒を手にして、天空の頂きを目指す
もう一回、もう一回
勝ち目の乏しいゲームに挑み続けていく
それは、彼の言う『負けず嫌い』と言うよりは本能的種の生存願望
全ての終わりか、種の進化か、共存か滅亡か……?
その選択が出来るのはたった一人の『主人公』なんだろうなぁ
颯刃が勇み足で駆ける
前方には白衣の装束を纏う人波
そのうねりを切り開かなければ、先には行けない
刀の柄を握り締め、鞘から引き抜こうとした瞬間に横を掠めた白刃
『オーバードライブ』
『コインショット!』
小さなナイフが的確に相手の右肩を穿ち、白衣が赤を滲ませる
颯刃の隣に並んだ2対の影
黒い青年と白い少女
勇音は言った
「あんまり消耗し過ぎるな。先制するのは俺の役目、だろ?」
『数学基礎論』 『即応手当』
鳴狐は言った
「……無茶はしないで……でも、私達も……一緒に戦うわ……」
淡い回復魔法の光が消えた頃に、緑の双眸は落ち着きの色を取り戻す
「解った」
短い言霊に乗せた幸福と微笑み
颯刃は今度こそ、刀を抜いた
『洗心』
迷いと雑念を断ち
『一閃』
敵の波間を叩き切る
「で、上に向かう階段は何処なんだ?」
戦闘を終えて勇音は周囲を見渡す
「それは……多分、あっち?」
曖昧な苦笑を浮かべた颯刃が小さく胸元で指を指してみる
「合ってるのか?」
「……解らない、のね……」
怪訝な勇音と僅かに落胆を含む鳴狐の言葉が重なった
「あ〜……そう、だなぁ……」
困惑する颯刃
つまり、誰も正解を知らないのだ
「ケッ、本当に使えないボンクラ共だぜ」
不意に響いた声は颯刃の衣服の陰から姿を出した小さな人形
「赤兎、道知ってるのか?」
「オレ様を何だと思って居やがるんだよ?
超ハイテク高性能なミミイ様々、だぜ?」
小さな腕を組んだ愛らしい姿に似つかわしくない不遜な口調
それがイレギュラーミミイの赤兎だなぁ、等と暢気に颯刃は思う
「お前等が雑魚と戦ってる間にフロアマップはダウンロード済みだぜ!」
「流石、赤兎」
「お?オレ様の有望さを素直に受け取るのは感心だな。
三人寄れば文殊の知恵にもなりゃしないボンクラにはそれ位の謙虚さは大事だよな、文殊様より役立つ赤兎様々を崇め感謝してナビゲートされるってもんだよ……ケケケ……」
「うん、それで昇り階段は?」
「コッチだ」
歩き出す颯刃の背中に小さく勇音が呟く
「……今、絶対流したよな?」
「……えぇ……」
「颯刃も成長したなぁ……良いのかどうかは別としてさ」
「……そうね……」
しみじみとした会話を終えて、勇音と鳴狐は我らがリーダーの後を追って、歩き出すのだった
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最終戦に向かう九龍パーティのヒトコマ
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