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深海に降り積もる銀雪


夢を視たんだ。



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「愛してたんでしょ?」


見知った水色の髪が揺れた。


「……馬鹿な」


真っ直ぐに見詰めて来る瞳は、一点の曇りも無くて
視線を逸らす。

そんな事有り得ない。
どれだけ思考を辿ろうと、そんな素っ頓狂な発想に行き着く筈も無かった。


「うんうん。無理も無いよね」


此方の反応を気にする様子も無く、彼女は頷いてみせる。


「有り得ない」

「そんな事無いよ〜?
だって、皆“そう”だもん」


平素に切り捨てる言葉すら嘲笑うかの様に彼女は屈託無く笑う。


「彼処じゃあ、皆が『彼』に恋をするの」

「馬鹿馬鹿しい」


そんな世迷い言、一蹴するに尽きる。
今度こそ、視線どころか全身で背を向けてやった。


「え〜?じゃあさぁ」

「………………」

「何で『違う』って言わないの?」

「………………!?……」


言われて気付く。
何故そんな簡単な否定を言わなかったのか?


言わなくたって、当たり前じゃないか
そんな筈無いじゃないか


「……それは……」


何通りもの“最もらしい”文章が頭を巡る。
それなのに、言葉が出て来ない。


「……そんな、訳」



「また、逃げるの?」


冷たい言葉が胸を貫く。

驚いて振り向けば、光を受けて金色を放つ長い髪。

殺意すら見える瞳に、体が強張る。


「貴方は何時だってそう。逃げてばかり……もう沢山よ」


細身の刃が左胸を貫いた。
背面から落ちる、感覚。



水音、気泡、揺らぐ視界。


(……あぁ、沈んでいく……)


不気味な程冷静に、深く染まる青を受け入れていた。

やがて青は光の届かぬ黒い闇へ。




感覚が遮断されて、全てが闇に溶け込んだ。





ゆっくりと、深海に雪が降る。




「なぁ」


声が聴こえた。


「お前だけなんだよ」

懐かしい声。


「お前しか居ないんだよ」

褪せる事の無い、太陽の記憶。

「だから」

(……解ってるさ……)


応じた言葉に、君が笑った。
つられて俺も……










「ふざけんなよっ!!」


瞬間、見えた怒号と姿。











目を覚ます。
いつも通りの空間。



溜息と共に夢の余韻は霧散して、記憶から消えた。



(変な夢を……視た気がする)


それすらも、日常が塗り潰すだろう。

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