「何で、お前さ…」
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暗い。
暗い、暗い…。
何かの音が、する。
風、爆破音、壊れる音。
「何?」
目を凝らせば、何かがぼやけて視えた。
長い、黒い、ソレが居た。
一瞬身構えかけたが、違うと悟る。
(あぁ、君は…)
悲しくなった。
怨み、怒り、悲しみ…
躯の中を沸き上がって渦巻いてくる。
復讐の名、憎んで憎んで打ちしひがれて、それでも…、
「生きて、居たんだね…?」
見ず知らずの命。
誰かに昔聞いた言ノ葉が、浮かぶ。
彼女は、正義の女神なのだ、と。
憎んで怨んで、姿だって変わっているのだろう。
躯が燃える様に、熱い。
「君、は…」
君は、[誰]だったのかな?
揺らぐ世界に答えは無い。
ねぇ、知ってる…?
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目が醒めた。
何だか息苦しく
て、肺が空になるまで息をしめだす。
「なぁ」
隣に居る仲間が尋ねるまで、気付か無かったんだ…。
「何でお前さ、泣いてるんだよ?」
濡れた頬に触れて、初めて自覚した。
何故?
何故こんなに熱くて、ごちゃごちゃしてて…悲しくて、
「俺、」
……嬉しいんだろう…?
「わかんない、や…」
苦笑を浮かべると相手は呆れて、早く寝ろと言って目を閉じた。
俺は、夢を覚えるのが苦手だ。
ただ、ぱたぱたと布団に染み込む雫は現実。
あの人は、幸福だったのかな…?
うろ覚えで、熱に浮された脳の残像。
名も知らぬ人を想う夜は、
空気を流れる雨音とごちゃまぜの感情に濡れて、過ぎて行った…。
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ねぇ、知ってるかい?
夢が世界と繋がる事を
そして
生命(いのち)の終わりにも、夢を視る事を…。