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細雪月下に散る華となれ

貴方が居ないなら

私に意味等有りません

貴方が居るからこそ

私は私で在り続けるのでしょうー…



冬月は冴えた蒼く影を道に刻み

音すら吸い込む銀華に包まれた此の場所は耳が痛い程静かだ…

首巡らせ、視線だけを後部に向ける

この時期の死んだ建物は時すらも殺す様に見えます

一体どれだけの時間が過ぎたのでしょうか?

朽ちた門は一見その役目を果たしていない様に見えます

しかし、知る人には解る

この門柱と塀は確かに結界であり、其の内と外を隔てている事を…

「…………」

吐く息は白を映したかと思えばすぐに霞消えて行く

貴方を中に入れて何刻でしょう?

…いえ…刻が問題では、無いのです…

私は結界師であり、貴方の剣であり、盾になる存在

父の様に、本来ならば貴方の横を並走する身

…なのに…

冷たい華はチラチラと陰を落として逝きます

何故

私は視る事が出来ないのでしょうかー…?

昔、貴方が指を差した先

私には変わらぬ空間に

居た、存在ー…

何故

私は…

見つめる掌に、陰が堕ちる

冷たく溶けて、私に滲む

何度貴方の隣を行く黒に羨望を向けたでしょうか?

何度、私は…

吐き出す白は闇に紛れる

寒さ等要らないから、痛みすら感じません

貴方を狙う朧なモノ

視え無いモノ、知らないモノ

貴方の世界と私の世界

其の、狭間の結界

やがて貴方は縛られる

私は貴方と違うモノを視続けて死ぬのでしょうか?

銀月が嘲笑う

こんな夜に、貴方は独りで魔を狩るのです


たった、独りでー…


口惜しくて、歯痒くて

貴方の元へ駆け出してしまいたい

小さな小さなその手が

私の指を掴んだ時に

貴方の為に総てを捧げると誓ったのです

駆け出して、傍に居て

貴方をお護りしたいのに…

視え無い存在が邪魔をする

私に力が有れば

私が貴方と共に視れたなら…

熱くて痛い、内を巡る感情が騒ぐ

いっそ、耳を塞いで

眼を閉じて

呼吸を殺してしまえたら…


貴方を護れるのですか…?


不意に、柔らかな風が体をなぜる

ハッ、と意識が戻った時には既に貴方が横に居て…

「…ご無事で、何よりで御座います…」

繕った笑顔だったかも知れないのに

「長く待たせたね。手が、こんなに冷たいよ…」

柔らかく握った指先から

暖かな想いが中和するのです

熱も、冷たさも

陰も陽も

貴方は優しく導いて…

「…一緒に、帰ろう?」

白に霞んだ笑顔すら

銀の光が映し出す

「…はい…」

踏み行くは銀華の路

進む中は闇

…なれど…

貴方は指し示し、歩みを止めない

だから私も…

温かなその手を握り返す

貴方の傍らを歩み続けたい

どんな障害すらも打ち壊して、貴方と共に生きたい


そう

澄み渡る夜に強く、望んだのですー…












あれから幾つの季節を巡ったのでしょうか?


私は視る力を知り、貴方と結界を越えて行ける様になりました

例えそれが、理を犯しても私は悔いは無いから…

私が私で無くなる時は

私が私を殺します

貴方は、解って下さると信じていますから…




此の身が貴方を傷付ける前に

此の魂で引きちぎって差し上げます

運命が貴方と分かつまで

私は貴方の為に燐片すら燃やし、捧げましょう

それが何時かの儚い雪華の様だとしても…

私ハ貴方ノ為ニ在ル

貴方の総てが私の誇り

だから…

私は貴方を護ります

それが貴方の命脈と私自身の誓いだからー…
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