「…『学園』の目的は何だろうな?」
「推論の域を出ん話しか出来ないが、恐らくは情報収集及び排除任務だろう」
「諜報活動って事か?」
「ユートン教授は『学園傘下である生徒は忠実である』と過信していた。
クルメ博士やホワイトナイツの言葉を信用するならば教授は『まとも』な思考の持ち主と言われている。
とすれば、まず間違いなく『機構』に居る大多数は『学園は忠実である』と認識していると仮定出来る」
「それで?」
「無論、機構の傘下において成り立つ学園だ、『図書館長』や上位職は従順だ。
また、彼女の権力範囲内であると思わしき『生徒会長』『放送部長』『アジテーター』も機構からすれば従順と捉らえるに足りるな」
「だからって、生徒が従順ってのはおかしくないか?」
「そこは文字通り『扇動者』達が従順に仕立てあげる。
館長や会長が指揮を下し、放送部長・アジテーター達が生徒を誘導する。
無論館長自身が任務を与える事や生徒会に関与する事で、生徒の能力や思考等の情報を素早く入手、報告する事が可能となり、今回の様な重役警護等に割り当て易くなる」
「流石に、万全じゃ無ぇから『スパイ』なんかに気付かなかったみたいだがな…」
「あぁ。
表面を取り繕い、従順さと実力を見せていれば、機構には近付くチャンスは有りそうだな」
「でもよ、諜報なら『特殊工作員』ってのが居るんだろ?
何でイチイチ素人に近い学生にさせてんだ?」
「…俺の推論なら、工作員達に知覚能力は無い、それか乏しい程度だろう…」
「はっ?なら廃墟に行くのは無謀だろうよ!?」
「『対ナノマシンワクチン』を機構は既に開発済みだ、多少の活動なら常人よりは可能だろうし、訓練も受けている筈だ…。
現状の打開に最も必要なモノは『情報』必然的に過去の施設にそれは眠っている可能性が高い。
機構は危険を承知で無知覚者を送り込んでいるのだろう。
現に最高精度で造られたミミイにも無い情報を機構は持っているからな?」
「…………」
「しかし、並の人間にガーディアンは倒せない。
教団員ぐらいならまだ人間同士で対等だが、奴等は改造信徒を生み出す技術を持っている、その時点で機構は太刀打ちする術が無くなる訳だな…。
しかし、情報を早く大量に所持したい機構は俺達『知覚者の大量獲得』という手段で対抗戦力を所持する事に成功している。
知覚者ならガーディアンも改造信徒にも太刀打ち出来、廃墟の機動力が高いからな…」
「…つまり何だ、俺達は『駒』にされてるってのか…?」
「そう怖い顔をするな、コレは『可能性が有る』に過ぎん話だ。
まぁ、現にガーディアンから廃墟症発症者、教団員…と対ガーディアンから対人間に移行はしているがな」
「結局は人殺しを量産してるだけじゃ無ぇか…ッ…!」
「邪魔な存在を排除するのには情報を操作し、使い易い存在の方が後腐れは少なくて済む。
…重役お得意の手を汚さないやり口だな?」
「…反吐が出るぜ…」
「必要な情報を与えない事により操作された存在は強固であり脆い。
盲目に信仰する力に疑念が湧けば効力も削がれる。
…ホワイトナイツが良い例だ、奴等は疑念を持った所に教団の情報を与えられた。
情報が更新されれば人は思考や言動に少なからず影響を及ぼす、故に奴等は教団に寝返る事を判断した」
「ちょっと待て、それじゃあ教団も機構も…!?」
「察しが早いな。
そうだ、両者共に他人の操作をして自らの望む世界に変えようと策を打っている。
トーキョーの解放、世界の保全、ドチラも極論では誰かの利己思想の世界だろうな」
「んな事させるかっ!!」
「落ち着け、お前が俺に操作されてどうする?
気になるのは他の勢力だ」
「他?…Kの事か?」
「あぁ、アレも恐らく別勢力だろう。
18企業のコンソーシアムに政府が機構や教団だけに関与しているとは思い難い。
それぞれの欲や思想が有ればもっと沢山の組織が水面下で活動していると考える方がシックリ来る」
「まるで神気取り、ってか…?」
「俺達も他勢力に分類される、かなり矮小なモノだがな?」
「止めてやるさ、何をしても…な…」
「ククッ…、情報と策と力で手繰り寄せられた未来はどんな世界か見物だな?
尤も、俺は興味はそそられんが…」
「俺達は俺達の好きにする、安全地帯の駒になんかなりゃしねぇよ!」
「…今は大人しく機を待つべきだ、まだ、な?」
「あぁ、色々と面倒なモンだが…な?」