研究施設地下5階で御堂達とハヤウエが激戦の繰り広げられていた頃、メイン施設では桐谷達が急いで研究施設へ。
途中で支部隊員2人と鉢合わせたが、三ノ宮は囃(はやし)を見るなり→「今御堂さん達が地下でヤバい感じになってる」と伝える。
囃は御堂と気心が知れた仲。囃は月島と上総(かずさ)に「本館に残れ」と言う。三ノ宮はノートPCの画面を見せた。地下5階の映像は凄まじいものでなぜ月島と上総が残れと言われたのか、理解。
「これから地下へ行ってくっからお前らは本館で留守番してろ。月島は病院にいる時任と合流してくれ」
「わかりました」
月島は急いで病院へ。上総は連絡通路に佇んでいる。
囃と桐谷、頭脳派な三ノ宮がいれば助っ人としては最高だろうな。
「研究施設にいる武装集団、ハヤウエ以外は地上みたいだからそいつらボコるか?どうよ、三ノ宮と桐谷」
囃も御堂に似たのか、口が悪い。桐谷はニコニコしながら答えた。
「じゃあ、研究施設にいる武装集団メンバー、首謀者のハヤウエ以外全員拘束して下さいね。
私と三ノ宮さんは先に地下へ向かいます。司令室からの情報で地下5階のロックは解除されてるとのこと」
「桐谷、お前いつの間に…」
「あとは任せましたよ!」
桐谷と三ノ宮も地下5階へ。残された囃は研究施設内にいた武装集団メンバーのサガミとイノウエをあっさり見つけてしまう。
囃は喧嘩腰だった。
「おい、そこの侵入者。な〜にこそこそやってんだ〜?」
サガミとイノウエは体格のいい囃を見てビビる。2人は逃げようとしたが無駄だった。
「ちょっと眠らせるだけだから気にすんな」
これは「気絶させるぞオラ」の意味らしい。当然サガミとイノウエはわけがわからないまま、気絶させられ呆気なく拘束された。
「たった2人でこの中の研究員を全員拘束しようとしてたのか?…ハッ!バカげてるわその発想」
囃も地下へ。
地下5階では三ノ宮と桐谷が合流。桐谷は背中に銃火器2つを装備していた。
マシンガンとロケット砲のようだが…。
御堂は最強の助っ人が来たと内心喜んでいた。桐谷さんはヤバい。予想通り、ロケット砲装備で来たか。
「『あれ』がハヤウエだ。今は一時的に弱ってるが、志摩の見解だとまたヤベーことになるらしい。
だから呼んだんだ。…1人少なくない?」
御堂はようやく気づいた。
「助っ人の1人は囃さんにチェンジしましたよ。そろそろ来るでしょう」
桐谷がしれっと言う。御堂は囃が来ていたことを知らなかった。支部隊員2人は駐車場で戦闘していたせいもある。
ハヤウエ獣態は志摩の見解通り、再び巨大化。御堂は思わず志摩に突っ込む。
「志摩だっけ?やつに打った薬少ないんじゃねーの?」
「あれは倒すための対怪人用薬じゃないよ。一時的に弱らせる効果がメイン。副作用で巨大化が通常サイズになるみたいだね」
「志摩!ここで薬の実験するなって!!」
姫島が思わず突っ込んだ。
「ちょうどいい実験台が暴れてるのにー…」
志摩はちょっと変わっている。医者だが研究肌タイプの変人。ゼノク医療チームで医療器具で戦う人間は志摩くらい。メス投げ飛ばすか?
御堂と憐鶴はほぼ同じ作戦を考えていた。桐谷のロケット砲は怪人にはかなり有効。巨大化した怪人にも効果的。
あれを使わずして、いつ使うか。
そこに囃がのんきに合流。
「和希、久しぶり!」
「囃!今戦闘中だっつーのっ!!」
「変わってねぇな」
御堂は囃の野太刀型ブレードを見た。
「囃、そのブレードって規格外なんだろ?」
「威力も規格外だが何か?」
「そこのでけー獣みたいなやつ、いるだろ。そいつがハヤウエの正体だ。怪人だが獣態にもなる厄介なやつ」
囃は察した。
「お前が何したいか、わかった。和希の指示に従うハメになるとはな〜」
「連携しねぇと撃破は無理だ。志摩・嵯峨野も力を貸してくれ」
医療チームの2人はあっさり快諾。姫島は加賀屋敷のサポートについた。
「加賀屋敷!まだなの!?」
「もうそろそろで終わる。完全封印はあと少し…」
完全封印?
「姫島は気にしないで。部屋にハヤウエを近づけるなよ」
「わかってるわよ」
姫島もハンドガンを構える。
憐鶴は対怪人用鉈・九十九(つくも)の威力を一気に上げた。
「御堂さん、九十九の雷撃は最大出力に出来ますが…どうします?」
「MAXにしてくれ」
特殊請負人の真の力って…このことか?
よく見ると憐鶴の鉈の形が変わった。変形出来るのかよ!?刀みたいになってる。元は鉈なので刀身の横幅は広め。
「これでリーチも長くなりますから」
ものすごい電気を帯びてる九十九を手にしているにもかかわらず、憐鶴は淡々としていた。本気を出した執行人、怖っ…。
御堂は2つの銃を立て続けに撃つ。やっぱりこの程度じゃ効かないか。
そこにロケット砲を構えた桐谷が。
「行きます!」
彼はロケット砲を発射。弾らハヤウエに被弾。その後粂(くめ)の矢と苗代の鎖で牽制、さらに志摩が再びあの赤い液体薬が入った瓶を特殊な銃火器にセット→ハヤウエの口に向けて発射した。
志摩は対怪人用の薬瓶を発射出来るように、ロケット砲を改造した銃火器を持ってきていた。
瓶は特殊仕様なので、簡単には割れないが怪人に当たると割れる仕組み。
この瓶には注射器の倍、対怪人用の薬が入ってる。ハヤウエは思わず振り返り、口を開けてしまう。ハヤウエは巨大化ゆえに油断していた。
薬瓶は見事にハヤウエ獣態の口の中へシュート。
御堂は隙を与えないようにする。
「憐鶴!二階堂!一気に行けー!!」
二階堂は右腕の義手を最大出力にすると、オーバーヒートし義手が使えなくなる可能性が高い。彼女はギリギリの出力で雷撃をする。
ヤバい…右腕持つかなぁ…!義手がやられたら終わりだよ…。頼む、持って!!
二階堂は辛そうな表情。憐鶴は九十九を最大出力にし、かなりの助走をつけてダッシュ。そして高くジャンプすると九十九の雷撃を展開。
「失せろ」
辺り一面眩い光に包まれた。憐鶴以外は目を覆ったり、その眩しさに一瞬目を閉じる。
憐鶴は黒いベネチアンマスクとフードのおかげか、光はあまり気にならないらしい。
九十九をハヤウエに突き刺した憐鶴。憐鶴はさらに気を込める。
九十九の最大出力…規格外すぎる…。音もすごいけど眩しい…。
突き刺した九十九を抜いた彼女は御堂にバトンタッチした。控えていた囃も動く。
嵯峨野はマシンガンでハヤウエの足元を攻撃。
一方の加賀屋敷は任務を終えた。
「姫島、これで危険はなくなったよ。あとはハヤウエを倒すだけだね」
「加賀屋敷!ハヤウエは弱体化しているわ」
「あとは彼らに任せよう。決着つくから」
三ノ宮はノートPCで演算→御堂と囃に伝える。
「御堂さん!囃さん!演算終わりました!!ターゲットのこのポイントを切り落として下さい!巨大化が無効になる前に!!」
「三ノ宮、サンクス」
「囃!行くぞ!一気にとどめを刺す!!」
2人は演算で導き出されたポイントをナイフやブレードで切り落とす。苦戦したが、なんとかうまくいった。
憐鶴と二階堂は雷撃を放ち続けてる。二階堂は疲れてきたようだ。
憐鶴はそっと肩を貸した。
「無理しないで下さい。義手が使い物にならなくなったら意味ないですよ!」
「…気にかけてくれてありがとう」
憐鶴は二階堂の義手を見た。オーバーヒートしかけてる。彼女は二階堂を止めた。
「利き腕なんでしょ?これ以上はいいから。二階堂さんはよくやりました。休んでて。苗代・赤羽!二階堂さんを休ませて」
「りょーかい」
憐鶴の協力者2人は疲弊した二階堂を安全なところへ連れていく。二階堂は戦いの行方を見たかったらしく、見える場所で休みたいと言った。
御堂と囃は獣態から人間サイズに戻った怪人態のハヤウエにとどめを刺した。
「お前の野望は終わりだ」
御堂はゼロ距離射撃でハヤウエを撃破。辺りに黒い血が飛び散り、派手に爆破。ハヤウエは爆散した。
こうして数時間にも及ぶ、武装集団によるゼノク襲撃は幕を閉じた。
武装集団メンバーは全員捕まり、レオナは罪を償うことになる。
御堂と囃は久しぶりの再会にテンション上がっていた。
「和希が隊長になっていたなんてな〜」
御堂の同期の囃は分隊長。
研究施設に拘束されていた研究員達と3人の研究室長も解放される。
二階堂は夏井室長に義手を診てもらっていた。
「オーバーヒート寸前でよく持たせたね。よくやったよ。念のため、細かいところ診ておこうか?」
「お願いします」
いちかと月島は御堂と囃の帰りを待っていた。病院で。
そこに御堂と囃の姿が。
「たいちょー!」
いちかは思わず抱きついた。びっくりする御堂。
「いちか、離れろ!誤解されるだろうが!!」
囃はニヤニヤしてる。
「和希〜。そいつ和希の彼女〜?」
「違うわ!こいつは後輩だ!!彼女は今、集中治療室にいる。手術受けた後だから、まだ目は覚めてねーけどな」
「…お前の彼女……紀柳院!?え!?嘘…知らなかった…。紀柳院は今…司令補佐だろ確か」
「何驚いてんだよ。支部には情報行ってなかったのか…」
だるそうないつもの御堂だ。いちかは嬉しそう。
いつものたいちょーだ。
ゼノク襲撃からどれくらい経ったのか。鼎は集中治療室から一般病棟へと移っていた。
お見舞い解禁となり、御堂達がぞろぞろと来た。鼎の病室は4人部屋だが鼎しかいない。
鼎はいつもの見慣れた白いベネチアンマスク姿。一般病棟に移ったことで、彼女も仮面姿に戻れることに安心していた。
鼎は加賀屋敷に「顔の大火傷の跡は消さないで欲しい」と最初から伝えていた。
仮面生活に慣れてしまった鼎からしたら、違和感があるからだ。
「きりゅさ〜ん!会いたかったよ〜」
いちかは泣いてる。鼎はいちかの頭をなでてあげた。
「お前、いちいちオーバーすぎるぞ…」
鼎の声は優しい。御堂はぶっきらぼうに聞いた。
「鼎…経過は順調なのか」
「あれから発作は出なくなったよ。加賀屋敷や姫島から聞いた。
手術…難しかったんだとね。あのチームじゃないと助からなかったと聞いた…。泣いたよ」
そりゃ泣くよなー。鼎からしたら、生きるか死ぬかの瀬戸際だったわけだし。
「鼎」
「和希…どうした?」
「退院したら祝ってやるからな」
「…楽しみにしておくぞ」
いちかはこのやり取りがどこかいとおしく思えた。何気ない会話なのに、温かい。
それからしばらくして。ゼノク研究施設地下5階を知った隊員は口封じとまではいかないが、長官直々にあることを伝えられる。
「例の部屋の内部見てないよね?見たら即、始末書だ。下手したら左遷だよ。あれはゼノク最高機密なんだから」…と。
加賀屋敷以外だと姫島が例の部屋に入ったが、姫島はギリギリ見ていない。
加賀屋敷は絶妙なタイミングで完全封印したからだ。
姫島は加賀屋敷が何をしていたのか、わからないまま。
「加賀屋敷、地下5階で何していたの?」
「姫島、それは秘密だから。左遷が嫌なら聞くな。ゼノク医療チームメンバーが左遷になったら組織的には大騒動だぞ。忘れなさい」
…なんだよ、つれないやつ。
ゼノクの謎は深い。
―了―