今回はサルマ・ハエック主演の『フリーダ』、観賞しました。
20世紀・メキシコの有名な女性芸術家の生涯を描いた歴史ドラマ。
実話を元にした映画の場合、感傷的で、実在の人物を描いているだけに遠慮がちで、美化された印象が強く残り、また(感傷的であるが故に)スピーディさに欠ける場合があります。
でもこの映画はそうじゃなくて、いい意味で予想を裏切られた。
描写は無遠慮に感じたし、それだけ事実に忠実に見えたし、感傷的な部分もスマートに表現されていて、矢継ぎ早の展開はスピーディで目が離せなかった。それに、スピーディなのに各事件・各登場人物がおろそかにもされていなくて、それだけ感動もある。
歴史を学びながら感動もあり、エンターテイメントにもなってる。いい映画だと思う。
差し色を使ったアーティスティックな映像効果もおもしろくて、視覚的にも楽しい。おすすめの映画です。
サルマは、主人公のフリーダ・カーロ役。実際のフリーダ・カーロに近付けて、眉毛は繋がれています。
これは日本だといじめの対象になりそうだけど、メキシコでは普通のことなんですかね。彼女は人に悪く言われたり、笑い物にされることなく生きていました。人は誰でもありのままの姿を受け入れられてしかるべきですが、私たちには不自然に感じられますよね。それ自体恥ずかしいことなのかもしれません。ありのままを受け入れる姿勢を、私たちも持っていきたいですね。
とにかく忠実に実際のフリーダ・カーロを再現しようとしたことが、サルマの演技から感じられます。見ていて好感を持ちました。
サルマ以外にも『スパイダーマン2』のアルフレッド・モリナ、『ダンシング・ハバナ』のディエゴ・ルナ(見ればわかるけど壮絶なイケメンです)、『あなたのために』のアシュレイ・ジャッド、『愛の奴隷』のアントニオ・バンデラスなど、かなり豪華な出演陣です。俳優的にも楽しめました。
若いときに事故に合い、生涯を通じてその後遺症に悩まされたフリーダ・カーロ。
明るく、愛し愛され生きた人生ですが、彼女の人生には痛み故の孤独と苦悩が付き纏っていました。
物語の最後、献身的に尽くしてくれる夫に対し、フリーダは物を投げ付けてこう嘆きます。
「あなたは何もわかってない!」
おそらく個展への出席に関しての口論だと思うんですが、この言葉は人が思うより広くを指しているように思えます。
病気や怪我で苦しむ人にとって、その痛みや苦しみは決して誰にも理解されるものではありません。似たような症例の人もいるだろうし、同じ病名の人もいるだろうけれど、どうあがいても自分の痛みや苦しみは、自分にしか理解できない。だから彼女が生涯抱えた孤独が存在する。
「痛くない体がどんなものか忘れる」ということが、どんなことか、ぼんやりとは想像できるけれど、やっぱり他人事だもの。
でも、だからこそ、そうした孤独を表現できる映画(漫画や小説もそうだけど)って価値のあるものだよね。
苦しみを知れば優しくなれる。全部はわからなくても努力はできるもの。
人にいいものを植え付ける作品って、きっとこういうものだと思うよ。
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