大佐殿とペルのお話です。
ペルは今までこうして誰かと暮らした経験があまりないので、
たまにこういう風に不安になってるんじゃないかなと思いまして…(^q^)
*attention*
大佐殿とペルのお話です
本家Laurentia!(学パロ)設定でのお話です
シリアスめなお話です
ふと不安になるペル
それを慰める大佐殿を書きたくて…
大好きなお兄ちゃんたちが居なくなるのが何より怖いんだろうな、と…
そんなペルに大丈夫だよって言ってやる大佐殿を書きたくて…(^q^)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
真っ暗な、部屋。
ペルはゆっくりと部屋の中を見渡す。
そして不思議そうに首を傾げた。
「あれ……?」
ペルは首を傾げる。
部屋に感じる、違和。
それは……
「此処……僕の、部屋……?」
彼はそう呟くとベッドから起き上がった。
そして、ドアを開ける。
ドアを出れば、廊下。
そして、リビングルームに行けるはず。
此処は、シュタウフェンベルク兄弟が住むマンション。
ペルはそんな兄弟に引き取られ、一緒に暮らしている。
その、はずなのに……
「え……」
ペルは思わず声を洩らした。
廊下に出た彼は、言葉を失う。
だって……
廊下は、見覚えはあるもの。
しかしそれは、シュタウフェンベルク家の廊下ではなかった。
無機質なリノリウムの床。
非常口を示す緑の光。
そして、並ぶドア……――
「此処……寄宿舎……?」
そう。
それは、ペルが暮らしていた寄宿舎だった。
静かな廊下。
そこは冷たく、寒くて……
無論、歩いても歩いても、兄達の部屋はなく。
部屋に戻っても、兄達の姿もなく。
「……うそ」
ペルは小さく声を洩らす。
胸が嫌な痛み方をした。
もしかして。
もしかして……
ああして、"兄達"と暮らせたのが、夢?
ああして、一人でなくなったのが……夢?
本当の自分は、いつものように一人の小さな部屋で寝ていて、
目を覚ましたらいつものように、一人で学校に向かうの?
「……や、だ」
小さく声が洩れる。
嫌だ、と。
怖かった。
大好きな兄達と過ごした日々が夢、だなんて。
そんなの絶対嘘だ、と思った。
しかし……――
「もし、夢なら……」
もう、醒めてしまった?
もう、自分は……――
―― また、ひとりぼっちなの?
「いや、だよ……」
ペルはそう呟く。
そしてその場にぺたん、と座りこむ。
それと同時……
ふっと、意識が浮上した。
***
「ん……」
ぱち、と目が覚める。
ペルは幾度か瞬きをした後、ばっと飛び起きた。
「……此処、は?」
此処は何処?
宿舎?
違う?
胸がどきどきして、良く分からなくなる。
ベッドの上にあるぬいぐるみたち。
それは、宿舎に居る時から変わらない。
だから、何の指標にもならない。
ペルは暫し固まっていた。
小さな手は布団を強く握りしめている。
―― 怖い。
怖かった。
今、確かめに行こうと思ったけれど……
これで、外にでていった時……
本当に、自分がいた宿舎だったらどうしよう。
独りきりなのが当たり前の世界だったら、どうしよう……――
そう思いながらも、おとなしくしていることは出来なかった。
ペルはゆっくりと、ベッドを降りる。
そして、ドアを開けた。
そこにあったのは無機質な非常灯ではなく……
リビングルームに続く廊下、だった。
ペルはそれにとりあえずホッとする。
それでも、自分が一人ではないということを確かめたくて、
彼は静かに、自分の部屋を出て行った。
小さな足が向かったのは、兄の部屋。
彼をこの家に引き取るきっかけを作ってくれた、クラウスの部屋だった。
真夜中だということは飛び起きた時に確認してある。
そんな時間に部屋を訪ねたら迷惑だろうとも思ったけれど、
一度胸に灯ってしまった不安はちゃんと確かめないと、消えなくて……
そっと、彼の部屋のドアノブに手をかける。
そしてドアを開けた。
静かな部屋。
そこにゆっくりと視線を向けていく。
目が留まったベッド。
それは丸く膨らんでいる。
ゆっくりと上下する布団。
ペルはそれに、ゆっくりと近づいていく。
そしてベッドを見つめた。
そこには確かに、クラウスの姿がある。
それを見て、ペルはほっと息を吐き出す。
その場に座り込んでしまいそうになるが、何とか堪えた。
「クラウス、兄さん……」
ペルは小さな声で兄を呼ぶ。
返事は求めていなかった。
彼が寝ていることは知っていたから。
それだけで、満足した。
帰ろう。
ペルがそう思った、その時。
「ん……ペル?」
小さな、クラウスの声。
それを聞いてペルははっとする。
ベッドに寝ていたクラウスが目を覚ましていた。
「あ……う、ごめん、クラウス兄さん……」
起こしちゃった、と言ってペルは目を伏せる。
帰ろうと思ったのだが、足がなかなか動かない。
クラウスが此処に居るとわかった。
だから、満足なはずなのに……――
ペルの様子を見て、クラウスは怪訝そうな顔をする。
何処か様子がおかしいペル。
苦しげというか、悲しげというか……
それでいて、何処か安堵しているというか。
一人部屋に置いて行かれた幼子が母親を見つけてほっとしているような表情だった。
そんな様子のペルをクラウスは不思議に思ったが、何かに怯えていることはわかる。
クラウスはベッドの上に体を起こすと、微笑みながらペルを呼んだ。
「おいで、ペル」
そういわれると、ペルは素直にうなずいて、彼にぎゅっと抱き付いた。
その体が小さく震える。
クラウスはそんな彼をそっと抱きしめた。
そして優しく彼の背中を擦ってやりながら、いった。
「どうしたペル……?
大丈夫、私はちゃんと居るよ。
そうだ、久しぶりに一緒に寝るか?」
ペルに問いかけるクラウス。
その言葉に彼はこくんと頷いた。
そして彼の胸に抱かれたまま、ベッドに寝転んだ。
クラウスはそっと彼の背中を撫で続けた。
ペルはそんな彼の胸に顔を埋めて、ぎゅっと彼にしがみ付く。
そして、小さく呟くような声でいった。
「ねぇ……クラウス兄さん、此処に……居るよね」
「うん。居るよ……ちゃんと傍に居る」
そういいながら、クラウスは一方しかない腕で、しっかりと彼を抱き締めてやる。
自分が傍に居るということを伝えてやるように。
ペルはそんな彼の言葉に少しほっとした。
しかしまだ完全に不安が拭えたわけではないようで、少し震える声でいった。
「クラウス兄さん……僕、もう独りは、嫌……」
ぎゅ、と彼に縋るペル。
その言葉に目を細めつつ、クラウスは言った。
「嫌な夢でも見たのか?」
「……うん。
目が覚めたら、宿舎に戻ってるの……
兄さんたちと暮らしてたのが、夢だったんじゃないか、って夢……」
一人ぼっちに戻る夢。
そんな夢を見たのだと、ペルは言った。
クラウスはそれを聞いて顔を歪める。
それから、優しく彼を抱き締めてやった。
そして長い黒髪を漉いてやりながら、いう。
「クラウス、兄さ……」
「それはただの夢だ、ペル。
私も……ベルトルト兄さんやアレクサンダー兄さんも、傍に居る。
大丈夫……もう絶対に、ペルを独りにはしないから」
彼はしっかりした口調でそういう。
そして、すまなそうな表情を浮かべつつ、言った。
「すぐに気付いてやれなくてすまなかったな……
また同じような夢を見たら、起こしていいんだぞ?」
多分兄さんたちも同じことを言う。
そういいながら、クラウスはそっとペルを抱き締めてやる。
その温もりや、鼓動を感じてペルはほっと息を吐き出す。
そして彼に抱かれたままに、目を閉じる。
「……幸せすぎて、怖い……な」
「今までずっと、いろんな苦労をしてきたんだ……
神様がプレゼントをくださったと思えば良い」
―― 私たちがプレゼントで嬉しいかはわからないけれど。
そんなことをおどけていうクラウス。
ペルは嬉しそうに笑って、いった。
「嬉しい……大好き、だよ」
そういって甘えるように擦り寄るペル。
彼を抱きなおしてやりながら、クラウスは言った。
「ペルは私の大切な弟だ」
そういいながら彼は微笑む。
そんな彼の暖かさを感じながら、ペルは眠りについたのだった。
―― 消えてほしくない温もり ――
(消えないで。傍に居て。
大好きな兄さんたちが居なくなるのが怖いんだよ…)
(大丈夫、居なくなったりはしないから。
大切な弟を怯えさせたりはしないよ)
2015-1-30 23:27