hanahami*

2024.4.13 Sat 22:32 :番外編:四季学警備委員の日常
一年首席 一ノ瀬禅の関心

警備委員会の活動内容は主に島内の見回り。異変がないか確認し、必要に応じてマナバイオとの戦闘も行うそうだ。見回りは三人一組で、日によって別のルートを調査するとのこと。
一年生は来週からの参加になるらしく、今日の委員会では、本決定となった今月のシフト表が配られた。御蘭生に水精……ミソノ先輩とミナモリ先輩の苗字は、あまり見かけないな。俺は初見じゃ読めない。他は全国大会の常連ばかりで特集記事も出ているし、実際に何度も対戦しているから、名前だけでなく、戦い方もよく知っている。そこでこの機会に、御蘭生委員長と天崎君の試合を見学させてもらうことにした。
光浦君と鷹峰さんも気になっていたようで、一緒に試合会場まで移動しているのだが、前を歩く対戦者二人のやりとりを聞いていると、気が抜けるというかなんというか。

「アンタは鷹峰様を差し置いて委員長って名乗ったんだ。先輩だからって容赦しないからね」
「ふふ、天崎くんって、悠くんがだいすきなんだね」
「大体鷹峰様はなぁっ、弱冠十三歳にして全国大会五連覇して殿堂入り、国際大会でも優勝を重ね、世界ランキング一位! 加えて頭脳明晰、美の化身とまで謳われる容姿、そして何より圧倒的なカリスマ性で、ファンクラブ会員数は十桁にのぼるんだぞ! 非公式だけど!」
「えっ、悠くんすごい」
「はァ!? こんなの初歩の初歩、一般常識だろ!?」
「そうなの? 教えてくれてありがとう」
「はあああぁ!? あーもう、本当に何でアンタなんかが委員長になってるんだよ!」
「あ、それは首席になったからだよ」
「だーかーらあああああ!」

「天崎君は今日も絶好調だな……」
鷹峰先輩が絡むと暴走するのはいつものこと。しかし、あれでは試合前に体力を消耗してしまうのではないだろうか。天崎君の特性を踏まえた、一種の戦略なのかもしれない。
「いつものことじゃない。いきなり先輩に喧嘩を売ったのには驚いていたけど、早々に実力を知る機会に恵まれて良かったわ」
流石鷹峰さん、慣れている。いついかなるときも優雅さを失わない戦乙女。強い。
「過去五年分、国内戦の記録を調べた限りでは、同姓同名の選手はいませんでした。可能であれば、天崎さんには長期戦を御願いしたいところです」
眼鏡を押し上げる光浦君の双眸がギラリと光ったような気がした。データ収集は、最早彼の趣味といっても過言じゃないからな。

話しているうちに、目的地に到着した。会場の広さは中等学校の体育館を四つ並べたくらい。戦闘可能範囲を示すラインには、スキル遮断機能が付与されているため、攻撃の余波が観客を害することはないらしい。
今回の対戦ルールは公式戦と同じ。天崎君の要請で急遽審判をすることになったので試合開始の宣言をする。
「……それでは両者の健闘を祈る。試合開始!」
俺達の頂点に立つ委員長は、果たしてどんな戦いを見せるのだろうか。


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