hanahami*

2024.4.10 Wed 22:09 :番外編:四季学警備委員の日常
一年四席 龍咲葵の困惑

以前本土の大会に出場したときに見かけたような、巨大な建物。お金や「ぽいんと」と、欲しい物を交換する購買。そして何より、両手両足の指を使っても数えきれないほどの人。同じ離島とは言っても、龍王島とは大違いだべ……。
入学して数日、ただでさえ圧倒されるようなことばかりでどうすべえと思うけんど、今はそれより、任命書を眺めて笑う右隣の天崎さんがおそがい。
「天崎さん、今日はずっとあの調子でしょうね」
左隣の光浦さんが、とんでもねえことを言い放った。
「だろうな」
「兄様信者の中では、まだ大人しいほうよ」
それなのに一ノ瀬さんと鷹峰さんも、当然のように返しとる。おそがい。信者って、鷹峰先輩は神様か何かだべか? 確かに格が違うような感じはするけども。ああ、でも委員会で会うことになるんだろうなあ……。
もうおらは無になるべ。何も聞こえねえったら、聞こえねえ。

ついに委員会に行く時間になっちまっただ。各学年の上位五名なんて、集まるのは錚々たるお人ばかりに違いねえべ。同じ組の四人ともろくに喋れねえのに。おら、ますます緊張してきただ。
でもお役目を放棄するわけにもいかねえし、なんて考えとる間に指定の教室に着いちまったようで、先頭の一ノ瀬さんが扉を開けた。こ、心の準備が……。龍神様、見守ってけろ!
「失礼します」
「あ、一年生の子達かな? 迷わず来れた?」
ふんわりと笑う、黒髪の女の人。どこかで見たような気がするべ。
「はい」
「そう、よかったあ。空いてる席ならどこでも座っていいからね。入学おめでとう」
「ありがとうございます」
なしてそんなにすらすら言葉が出てくるだか。すごいべ。
「じゃあみんな揃ったみたいだし、委員会を始めようか。わたしは委員長の御蘭生敬だよ。よろしくね」
そういえば、入学式で挨拶しとった先輩がそんな名前だったかもしんねえ。さっきの疑問が解けたのはよかったけんど、何やら雲行きが怪しくなってきた。
「はァ!? アンタ何言ってるの!? 委員長は三年生の首席がやるって話だよね!? 鷹峰様がいるだろ!?」
勢いよく立ち上がる天崎さん……いやいや、いきなり先輩に向かって何言うとるべや!?
おっ父、梅さん、龍神様。島の外って、おそがいとこだべなあ……。


続きを読む

 0 



b o o k m a r k


p r e v n e x t
g o  t o  t o p

-エムブロ-