フォルスタSSです。
学パロというか現代パロ(ナハトさんの小説Laurentia!の設定)で
書かせていただくのが楽しくて…←
*attention*
・フォルスタSSです
・ナハトさんの素敵小説「Хорошо. Спасибо!」にちょっとリンク?
・Twitterで聞いた話からつい…書いてしまいました←
・フォルは意外と読書家です。でも計画性はゼロです。
・相変わらずの星蘭クオリティ
・ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「相変わらず、今ひとつな蔵書量だなぁ……」
本の棚の前に立ちながら、呟く少年。
薔薇の校章をポケットにとめた彼……
フォルは、図書館の歴史関連の本が多くある棚の間にいた。
自分の目的の本を探して幾つもの本を開いて見ている。
ぱらぱら、と軽くページをめくっては、
自分の"調べもの"に使える本か否かを判断していた。
「少なくとも此処で立ち読みするような本、でもないか……」
そう呟くと、フォルは目に付いた本を手に持ったまま、本を選び始めた。
ただし、彼はそこまで力のある方ではない。
何冊も積み重なった本は、彼の腕にかなりの負荷をかけていたようで。
「重……」
何冊か手に本を持ったところで、腕が限界だった。
もうこれくらいにするしかないと思いつつ、
次の本に伸ばしかけていた手をおろした途端。
積んでいた本のバランスが崩れた。
「わ!」
ばさばさ、と音を立てて本が落ちる。
周りにいた人達が迷惑そうな視線を彼に向ける。
流石に少々決まり悪さを感じたのか、フォルは慌てて本を集め始めた。
その時。
「え?フォル?」
聞きなれた声に、フォルは顔を上げる。
そこにいたのは、長い浅緑の髪を後ろに流した少年で。
思わぬ人物に思わぬ場所であったためか、何度も瞬きをしていた。
「あれ?書記長様も図書館来てたんだ。
こんなとこで会うなんて、偶然だね」
にこり、と笑うフォル。
スターリンは幾度も瞬きをした。
「……すごい量の本だな」
スターリンは彼が手にとっていたであろう、床に落ちた本を見て呟く。
フォルはそれを拾い集めて、笑った。
「ちょっと、調べ物をしたくてね……」
「借りに行くのか?」
「うん」
拾い集めた本を持ち上げたフォルは頷く。
しかしやはり本が重いのか、少々引きつった笑みだ。
スターリンは溜息を吐いて、積まれた本の数冊をフォルの腕からとった。
「……手伝ってやるよ。また落とすだろ、お前」
「え?あ、ありがとう」
ごめんね、と謝るフォルを見てスターリンは言う。
「貸出に使うカードでも、出しとけ」
「……あ」
と、フォルが間抜けな声を出す。
スターリンは何となく、自体を推測した。
「忘れたのか」
「……あはは、久しぶりに来たからすっかり忘れてたよ。
貸出にカードいるんだっけ。家においてきちゃった」
「馬鹿だな、お前」
スターリンは呆れ返って、
本を棚に戻す作業を手伝うことになったのだった。
***
―― 此処は図書館の傍のカフェ。
"手伝ってくれたお礼だから"と言うフォルに強引に引きずられて、
スターリンは此処にくることになったのだった。
外は寒いからと温かい飲み物を頼み、話す。
スターリンは素直にさっき思ったことを口にした。
「お前が、あんなとこにいるなんて思ってなかった」
彼の言葉にフォルは頬を膨らませる。
「失礼なこと言うなぁ……僕、これでも勉強はちゃんとしてるんだよ?
本読むのだって好きだし、成績だけはいいんだからね」
成績だけは、という彼の言い方に引っかかって、スターリンは問う。
「素行は劣悪、ってことか?」
「劣悪かどうかは知らないけど……
あまり、いい評価はもらってないね。
殊更、世界史は、テストで挽回しなきゃまずいかな……」
忘れてた、と小さく呟くフォル。
この年になってココアを頼むような子供っぽい彼。
素行が悪い、と言われてもなんだか納得がいく気がする。
スターリンは眉を顰めた。
「挽回、って……お前何かしたのか?」
「ん?んー……ちょっと、ね」
"あの時"のことを思い出してフォルは少し顔を顰めた。
自分のしたことを一切後悔などしていない。
ただ、これでテストの点数が悪ければ、
おそらく成績は大変なことになるだろう。
しかしすぐにいつものように笑って、
"大丈夫、試験で満点取れば教師も文句言わないさ"と茶化して誤魔化した。
そして、冗談めかして、半ば本気も織り交ぜながら、呟く。
「本当は世界史の授業、全部ボイコットしてやりたいんだけどね」
「おい……お前、受験生だろ」
「そうだけどさ……世界史の教師、嫌いなんだよ、僕」
―― 正式に言えばこの前嫌いになった、だけど。
そう思いつつ、フォルは視線を外に逃がす。
彼にしては珍しい表情を不思議に思いつつ、スターリンは話を元に戻した。
「で?何で図書館にいたんだ?」
「さっきも言ったとおり、調べもの。
ちょっと知りたいことがあってね……」
「ふーん……でも、何を?
課題か何かか?この時期に課題って出るものなのか?」
理系なのに、というスターリンの質問に、フォルは首を振る。
"勉強に違いはないけどね"と前おいてから、彼は答えた。
「ソ連のことを、詳しくしらべようと思って」
フォルの言葉に、スターリンはカップを揺らしていた手を止めた。
顔を上げ、自分を見たスターリンを見つめ返し、フォルは微笑む。
「世界史では、そこまで詳しく取り扱ってくれなかったから。
教科書に書いてあること以上のことは、まともに教えてもらえないだろうね。
僕が知りたいことは、教科書に載ってる範囲外。
それなら、自分で調べるしかないかなぁ、って思ってさ」
そう、純粋に彼のことを知りたいと思って、フォルは図書館に来ていたのだ。
学校の教師に話を聞こうにも、どうせ否定的なことしか言われない。
不快になるために話を聞きに行くなんて、まっぴらだと思っていた。
書物ならば、ある程度機械的に、真実を教えてくれる。
それを書いた人間の主観が入るような本も多々あったが、
そういったものはめくった時に避けた。
全ては、そう。
今目の前にいる、彼のことを知りたいがために。
しかし、スターリンは真剣な顔をして、首を振る。
「駄目だ」
「え?」
彼の声に、フォルはきょとんとした顔をする。
スターリンは真剣な、そして何処か辛そうな顔をして何度も首を振った。
フォルは彼を見つめ返しつつ、困惑気味に訊ねる。
「なんで?」
「駄目。絶対に駄目だ。……知られたくねぇ」
首を振り、頑なにフォルのしようとしていることを止めようとするスターリン。
フォルはしばしそんな彼の様子を見つめていたが……
やがて、ふっと笑って、言った。
「僕は、君のことが好きだから、知りたいだけだよ?」
「……っそれでも、駄目」
好き、という言葉に一瞬言葉を詰まらせつつ、スターリンは彼を止めた。
ただ"駄目だ"と繰り返すスターリン。
―― 知られたく、ない。
授業で詳しく扱わなかった、という言葉に幾分ほっとしていたのだ。
知られたくない。
自分のオリジナルの所業。
それなのに、彼は自分からそれを調べようとしているというのだ。
彼が授業でどこまで習ったのか、
"スターリン"のしたことをどの程度知っているのか、
これからどの程度、知っていくつもりなのか。
それらすべてが不明ではあったが、
どうしても……彼に、知られたくなかった。
俯くスターリンを見つめ、フォルは彼に問いかける。
「……駄目、なの?嫌、なの?」
真っ直ぐに、青い瞳がスターリンを捉えている。
「どういう、意味なのだよ……」
違いがわからない、とスターリンが言うとフォルは微笑んだ。
その言葉の違いは、きっと些細なものなのだろう。
しかし、フォルにとっては大きな意味を持つようで。
「駄目、だというのなら僕は調べるよ。
駄目と言われてもやりたいと思ったことはする主義なんでね」
「……子供、かよ」
若干吐き捨てるように、スターリンはいった。
声が微かに震えていた。
「よく言われるよ。我侭な子供みたいだ、ってね。
……それで?どうなの?」
苦笑を浮かべたあと、フォルはふと真剣な顔をして、もう一度問うた。
"駄目"なのか、"嫌"なのかを。
スターリンは俯く。
ほんの少しだけ残ったコーヒーに映る、自分の顔。
そして少し間をおいてから……答えた。
「……嫌、だ。やめてくれ」
調べないで。知ろうとしないで。
精一杯の、頼み。
「そう。……それなら、やめる」
聞こえたのは、穏やかなフォルの声。
あっさりとそういったフォルを、驚いたようにスターリンは見る。
"何驚いてるの?"とフォルは笑った。
「僕は、君のことを知りたいと思った。
だから、"あの時代"のことを調べようと思った。
もちろん、君を貶めたり苦しめたりするためじゃない。
君のことが好きだから……
好きな人を知りたい、と思うのは当然だろう?」
そう、当然のこと。
"彼"を知ったところで自分の思いがマイナスに行くことはないと、
フォルは確信していた。
彼を知っても、ただ、愛しさが増すだけ。
増した愛しさが、さらに"彼のことを知りたい"という思いに向かわせるだろう、と。
だけど。
「でも、君が嫌だというのなら、やめておくよ。
君を傷つけるために知りたいわけじゃない」
そう言いながら、フォルは机の端に置いてあった伝票を掴んだ。
"そろそろお店出ようか"と言いながら振り返った彼は、微笑んで、付け足す。
「でも……その代わりに、君が僕に教えてよ。君自身のことを」
―― "彼"じゃなくて、"君"のことを。
フォルはそう言って、笑う。
そしてスターリンが何か言うより先に、時計を見た。
「ほら、そろそろ行こう。
僕はフィアに怒られちゃうし、暗くなっちゃうよ?」
ね?と言って会計に向かう彼を、スターリンはまじまじと見つめる。
普段鈍くて、他人の神経を逆なでするようなことばかり言っている彼。
見ていた限りフィアに対してはもちろん、
自分に対してはからかいや冗談のような発言が多かった。
しかし、今の彼の言葉は違って。
「書記長様ー?置いてっちゃうよ?」
「あ、あぁ、今行く……!」
彼に呼ばれ、店のドアへ走る。
"途中まで送るね"と微笑む彼は、いつもと変わらぬ表情だった。
―― I want to know ――
(君を知れば君に近づける気がした。
俺は、時々お前が見せる真面目な表情に困惑するのだよ)
2013-1-31 22:15