ジルさんとレキのお話です。
シリーズの区切り?的な。
リアクションに悩んだ末に迷走しました
*ATTENTION*
ジルさんとレキのお話です
シリアスなお話です
「漆黒のなかで」の続きです
ジルさんが暴走してる姿を書きたくて…←
混乱してる美人さん可愛いと思うのです
そしてレキにああいう風にすがるジルさんが書きたかったのです
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
何度も何度も剣をぶつけ合う。
逃げても逃げても追われて、ねらわれて。
ついに、剣を落とした。
腕が痺れて動けない。
その場にへたり込んだレキに歩み寄り、ジルは言う。
「本気で抵抗しないとすぐに終わってしまいますよ?」
貴方だって死にたくはないでしょう?
人間というのはそういうもの。
簡単に命を捨てるものではないのです。
そのとき必ず神に祈るのです。
助けてほしい、と。
そういって、ジルは笑う。
痛々しいほどの笑み。
レキはそれをみて顔を歪めた。
「その願いも届かない、と」
「えぇ。……どれほど願っても神はその願いを叶えてなどくれない。
ほんの微かな、小さな願いでさえも……
そんな存在を信奉するのは、滑稽とは思いませんか」
そういって、ジルは目を細める。
そして、歌うように言うのだ。
"だから、私は神を嘲るのです"と。
普段のジルを知っているレキにとって、その言葉は余りに違和感のある台詞。
あまりに、苦しげな声に聞こえてならなかった。
だって、彼がこうなったであろう原因は、なにも知らないレキでも推測出来る。
こうなってしまうほどに彼は深く傷ついていたのだと。
レキはいろいろなことを後悔していた。
なにから後悔すれば良いのかわからないほどに。
彼がお使いにいきたいといったとき止めれば良かった?
彼から離れることなくぴったりとくっついていれば良かった?
彼が見知らぬ青年に犯されかけたとき、ずっとずっとそばについていれば良かった?
彼を一人にすることなくずっと……
−− きりがない。
レキはそう思いながらふっと息を吐き出す。
そして、目を閉じた。
そんな彼をみて、ジルは意外そうな顔をする。
不思議そうに首を傾げつつ、彼はレキに言った。
「どうしたのです、逃げないのですか?」
殺してしまいますよ。
ジルはそういいながら、レキの首に剣を突きつける。
簡単に、頸動脈を切れる位置。
しかしレキは動こうとしなかった。
その表情に灯るのは、不思議な感情。
怒りでも悲しみでも、ましてやあきらめでもない。
ただただ、優しい光が灯っていた。
逃げないのか
ジルがそう問いかけると、レキは微笑む。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「……いいよ、ジルがそうしたいなら」
レキは、そういった。
ジルはそれを聴いて大きく目を見開く。
彼の魔力が揺らぎ、剣がふるえるのを感じた。
「俺が悪いんだ、ごめんな、ジル」
そばにいてやれなくてごめん。
まもってやれなくてごめん。
……でも。
「俺は、お前が好きだから……大好きだから、さ?
お前が、俺を殺したいって言うならそれでいい」
きっぱりと、レキはそういう。
これが運命だというならそれでいい。
そう言いたげな表情で。
ジルは少し、困惑した様子。
光のない金の瞳が、揺れた。
レキはそれを見つめながら、言う。
「……殺せばいい、ジルがそうしたいのなら。
でも、かなうなら……絞め殺してほしいかな」
そうすれば、最期にお前の手を感じられる。
そういって、レキは苦笑を浮かべた。
ジルは彼の言葉に笑みを浮かべる。
そして剣をおいて、レキの首に手をかけた。
「かまいませんよ。
それくらいはかなえてあげましょう」
ジルはそういいながらレキの首にかけた手に力を込める。
レキは目を閉じて、彼に身を委ねた。
−− 一種の、賭けだった。
彼の瞳に微かに揺れた、戸惑い。
それに対しての。
首を、締め上げられる。
緩やかに酸素を奪われていく感覚。
苦しくてもがきそうになったが、必死に堪えた。
魔力が、流れ込んでくる。
彼の、悪魔属性の魔力が。
死ぬ、かも知れない。
死にたくないし、彼に殺しなどさせたくないけれど……
レキは漠然と、そう思っていた。
と、そのとき。
不意に、その手が緩んだ。
「げほっ、ごほっ……」
急に入り込んできた酸素にレキはせき込む。
涙に潤んだ瞳で見上げたジルは、呆然としているようだった。
口元に浮かんでいた笑みは消えている。
代わりに、金の瞳には光が灯っていて。
彼は、ふるえる自分の手をみる。
そして、不意に叫びだした。
「いやだ……いやだ、嫌です嫌ぁ!」
悲痛な、叫び声。
レキは驚いて、体を起こす。
彼は自分の手に爪を立てながら、ふるえる声で叫んだ。
「お願い……お願いです……誰か、誰か私を…、私を止めて…!
私は……、殺したくなんて……」
止めて。
誰か、止めて。
殺したくなんかないのです。
ジルはふるえる声で叫ぶ。
「ジル……っ」
レキはジルを呼ぶ。
その声に驚いたように視線をあげたジルは、レキにすがりついた。
「あああっ、レキ、レキ……っ!
助けて……こわい……魔力が、悪魔が……こわいです、こわい……こわい……!」
悲鳴じみた声を上げるジル。
彼はただただ、怖いと繰り返した。
レキを殺すつもりなんてなかった。
悪魔に身を委ねるつもりもなかったのに。
気がついたら魔力を暴走させ、悪魔が求めるままに動いていた。
……レキを、殺そうとしていた。
後少し。
後ほんの少し、強い力でレキの首を絞めていたら。
後ほんの少し、魔力を流し込んでしまったら。
彼を、殺してしまっていたかも知れない。
それが、怖かった。
レキはそれを聞いてほっと息を吐き出す。
そして、すがりつくジルをしっかりと抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫だよ……俺は、生きてる……ジルを、人殺しにはしないから」
大丈夫。
レキは彼をそう宥める。
ジルの体は可哀想なほどに震えていて、肩口には熱い涙を感じた。
しばしそうしてレキにすがりついていたジルは小さくもがく。
そして"ごめんなさい。こんな行動も間違っていた"とつぶやいた。
レキが驚いて顔を見ようとすると、ジルは彼から離れようとする。
そしてふるえる声で言った。
「私から……私から離れて、お願いします……
殺してしまう前に……お願いだから……!」
貴方を殺したくない。
貴方を、傷つけたくない。
ジルはふるえる涙声でそういった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ご、め……っ、でも、怖くて……ぁ、ああっ」
「ジル」
完全に錯乱している様子のジル。
それをしっかりと抱き留めながら、レキは静かに彼を呼んだ。
びくり、とジルの体が強ばる。
怯えているかのように。
……レキが、別れを切り出すのをおそれているのだろうか。
そう思いながら、レキはいった。
「ジル……落ち着け。
俺は、此処にいるから。
大丈夫、ちゃんと俺は此処にいる……
絶対に、離れない、離さない、お前を裏切ったりしないよ」
彼の耳元に、彼は穏やかな声で言う。
正直体を動かすのもだいぶ辛かったが、今此処で彼を手放してしまったら、もう二度と戻らない気がした。
永遠に、彼を失ってしまう気がした。
「いいんだよ……大丈夫。
俺はちゃんと此処にいるからさ、大丈夫……」
何度も何度も、彼にそう呼びかける。
彼がおとなしく自分の胸におさまってくれていることに安堵しながら。
ジルは痛いほど強くレキにすがりついている。
まだ微かに聞こえる啜り泣き。
それをおさめてやろうとするように、レキはそっとジルの背中をさすってやっていたのだった。
ーー ただ、抱きしめて… ーー
(愛しているって、その言葉がほしくて…
でもそれを私は求めてはいけないと…)
(触れてほしい、抱きしめてほしい、そう願っているはずなのに。
それが出来なくて苦しむ姿は、みていられないんだ…)