フィアのSSです!
いや、常々疑問ですが…フィアはよく女の子だってばれないな!(笑)
でもきっと、お風呂入ってるときはいろいろ考えてるんだろうな、
……なんて思いながら書いてみました。
一応ディアロ城には大浴場もあるんですよ。
フィアは何が起きても使えませんけどね(笑)
と、そんな奇妙なテンションですが、OKという方は追記からどうぞ―!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
フィアのSSです!
いや、常々疑問ですが…フィアはよく女の子だってばれないな!(笑)
でもきっと、お風呂入ってるときはいろいろ考えてるんだろうな、
……なんて思いながら書いてみました。
一応ディアロ城には大浴場もあるんですよ。
フィアは何が起きても使えませんけどね(笑)
と、そんな奇妙なテンションですが、OKという方は追記からどうぞ―!
何時ものように訓練を終えた後。
「フィア、一緒に浴場に行かないか?」
フィアは振り向いて、一瞬驚いた顔をした。
恐らく、"事情"を知らない騎士なのだろう。
不意に声をかけてきて、そんな爆弾発言をする。
ディアロ城には各部屋についている小さめなバスルームのほかに、大浴場がある。
そこを利用する騎士は割と多いのだが……
無論、フィアは、そこに行くわけにはいかない。
理由?それは単純明快だ。
今、彼は当然フィアを"男"と思って誘ったのだが、フィアはれっきとした女。
まさか、一緒に風呂などは入れるはずがない。
隣でシストが可笑しそうに笑っているのを軽く小突いてから、フィアは返答した。
「いや、すまないな。俺は今から少し、ルカに用事があるから」
「相変わらず統率官に使われてるな」
「ま、無能な従兄を助けてやらないと、な?」
フィアの返事に、その騎士は納得顔で頷いて、去っていく。
彼含め、他の騎士たちの姿が見えなくなると、フィアはほっとしたように息を吐いた。
「ふぅ」
「はは、大変だな、フィア」
「笑うな馬鹿。俺は割と必死だぞ」
溜息を吐くフィアに、シストは"お疲れ"と言ってわらう。
そして、グイッと伸びをした。
「俺も風呂いってくるかな……汗かいたし」
「だな。俺も部屋に帰ってシャワー浴びるよ」
フィアはとパートナーと別れ、部屋に戻った。
***
―― 自室。
フィアはシストに言ったとおり、バスルームにいた。
シャワーを浴びながら、先刻のやり取りを思い出して、小さく苦笑する。
一応、女であることがばれても騎士団に居られなくなるようなことは恐らくない。
しかし、自分が女だとばれたら、周りは一体どういう反応をするだろう?
「……想像もつかないな」
小さく呟いて、シャワーのコックを止める。
短い亜麻色の髪から水滴が滴った。
「ふぅ……」
小さく息を吐いて、浴槽に体を沈める。
甘い香りのするオイルを入れた湯に身体をつければ、
少しずつ疲れも抜けていく気がする。
ぱちゃ、と小さく水を跳ねさせては、穏やかに笑った。
「こうしてみると、本当に俺は、"俺"がわからなくなるな……」
ふっと笑って自らの身体に視線を落とす。
色の白い肌、華奢な手足、そして普段サラシで巻いて潰している胸……
十年近く"男"として生きてきた、自分。
しかし、風呂に入れば嫌でも自分が女であることを認めざるを得なかった。
―― 昔は、よく思ったっけ。いっそ男だったなら、と。
力にしても体格にしても、男には負ける。
この騎士団に入ったばかりの頃……十歳前後の頃は、あまり変わりがなかった。
否、逆に訓練を積んでいたフィアの方が力も強かったかもしれない。
しかし、時が経てばそれも変わる。
今は、力だけで同期の騎士に勝てと言われたら相当の苦戦を強いられるだろう。
昔は、それが嫌で嫌でしょうがなかった。
女であることが自分の"強さ"に対する枷になることが。
親を殺され、強さを求めた。
花を摘む手は剣を握る手に変わり、
花の棘で傷を負う代わりに剣を握る強さでいくつも肉刺ができた。
口調も変わった。
長かった髪も短く切った。
それでも、フィアはやはり女で……
少しずつ変化していく体に戸惑いもした。
仲間たちと開いていく体格差。
大きく、がっしりした体つきになっていく同期生。
彼らよりずっとずっと華奢で、女らしくなっていく自分の身体に、悩みもした。
―― いっそ、男であれば。
そう思えども、無論それは叶わぬ願い。
フィアは何をどう足掻いても女である。
今では、その想いも捨てた。
女であれど、強くはなれる。
身体が大きければいいわけではない。
小柄なら小柄なりに、戦い方はいくらでもある。
魔術を磨くことも、剣術を磨くことも出来るのだから……
そう思って、フィアは強くなってきた。
***
「母さんと父さんは、どう思うだろう」
ふと、思う。
自分の両親は、今の自分を見て何というだろう?
幼い頃は、正直今と対照的な生活を送っていた。
柔らかい、女の子らしいワンピースを身に着けて、淡い色のリボンで髪を結って。
草原に座って、本を読んだり花を摘んだりするのが好きだった。
そんな自分を知っている両親は、
今、男として戦っている、剣を握っている自分たちの"娘"を見て、何を思うだろう?
―― 喜んで、くれるだろうか。
我が儘な願いかもしれないな、とは思った。
本来、女性は女性らしく、
男性は男性らしくあるべきだという考え方をする人間の方が多い。
しかし、フィアには何となく確信があった。
もし、両親が今の自分を見たとしたら……きっと、喜んでくれるだろう、という確信。
姿が変われど、どんな生き方をすれど、自分の両親はきっと喜んでくれる。
そう、思っていた。
「ふふ……もっとも、二人が生きていたら俺は此処にはいない、か」
そう呟いて、フィアは笑った。
そうだ。もし、両親が死んでいなければ、きっと今頃……
「何を、していただろう」
ふと、疑問に思う。
子供の頃からの夢を追い続けたなら、歌手になっていただろうか?
否、もしかしたら誰かの元に嫁いでいたかもしれない。
十七歳……貴族であれば、許婚がいてもおかしくはない。
「なんて、な……ふふ。想像もつかない」
そう呟いて、ぱしゃり、と湯を跳ねさせる。
浴槽に深く体を沈め、フィアは目を閉じた。
―― 女に戻りたい。
騎士になったばかりの頃は、そう思ったりもしたっけ。
覚悟を決めたつもりでも、やっぱり妥協しきれないところはいくらでもあった。
辛いことだって、苦しいことだってたくさんあった。
でも、"自分で選んだ道だから"と。
強く、強く生きてきたのだ。今まで、ずっと……――
一度湯の中で伸びをしてから、自らの頬を叩く。
「よし」
気合を入れなおしてから、浴槽からでた。
蒼い瞳には強い光を宿し。
華奢な腕には大切な者を守りたいという強い意志の力を宿し。
フィアの短い髪からぱたぱたっと、雫が床に落ちた。
タオルで体を拭いて、着替える。
胸にはサラシを巻いて。
鏡の前に立てば、中性的な容姿をした"騎士"が立っている。
―― この身体が動く限り。
フィアは、誓う。
―― 戦い抜いて見せようじゃないか。騎士として。男として……
勇ましく、凛々しく。
フィアは、そう誓って騎士服に袖を通した。
―― 強く、勇ましく ――
(迷うことなんてない。他でもない、自分が選んだ道なのだから……)